本から学ぶ、多文化共生のヒント/第4回『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』

本を通して、異なる文化や価値観や人々の暮らしにふれると、世界の見え方が少し変わることがあります。この連載では、多文化共生について考えるきっかけになる本を、一冊ずつご紹介していきます。第4回は、正解のない問いを通して"国際協力"や"ともに生きること"を自分ごととして考えさせてくれる一冊、『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』です。(EP225)

この本には、「正解ってあるのかな」と、思わず立ち止まってしまう問いが、いくつも出てきます。タイトルにもなっている、カカオ農園で働くチョコレートを食べたことのない子どもに、自分のチョコレートをあげるべきか、あげないべきか。ブラジルから来た転校生に、校則違反だからとピアスを外させるべきか。あげていくときりがないくらい、こうした問いが次々に出てきます。どの問いにも簡単な答えはなく、自分ならどう答えるだろうと、何度も手が止まりました。
「正解のない問い」と、どう向き合うか
「困っている人がいたら、どんな声のかけ方ができるだろう」「お互いに気持ちよく暮らすためには、どんな工夫ができるだろう」。そんな問いにも、すぐに答えが見つかるとは限りません。その背景には、一人ひとり異なる事情や価値観があります。
大切なのは、一つの正解を見つけることではなく、「もし自分がこの場にいたら」と想像しながら、相手の立場にも思いを巡らせ、考え続けることなのかもしれません。
世界を見てきた著者による「読むワークショップ」
本書のタイトルにもなっている問いは、テレビ番組でガーナのカカオ農園を訪れた若者たちが交わした議論から生まれたそうです。木下さんは、こうした「一つの正解に決められない問い」を数多く集め、読者自身が当事者となって考える”読むワークショップ”として一冊にまとめました。
内容は、第1章「“豊かさ”って、なんだ?」で国際協力にまつわる問いを扱い、第2章「“ともに生きる”って、なんだ?」ではより身近な多文化共生の問いへと移っていきます。
読み進めるうちに、これは国際協力だけの話ではなく、学校や地域、職場など、私たちの身近な場面にも通じる問いなのだと思いました。文化やルールの違いをどう共有していくのか、お互いに納得できる形をどう探していくのか。さまざまな立場の意見に触れながら、自分自身の考えも何度も揺さぶられます。特に、ブラジルから来た転校生のピアスをめぐるルールや文化の違いを扱うエピソードや、災害時に外国人へどう情報を届けるかという章は、多文化共生は特別な場面だけの話ではなく、私たちの日常や職場にもつながるテーマなのだと改めて感じさせてくれました。
そして第3章「出会うことに意味がある」では、ルワンダで義足を作るルダシングワ真美さんをはじめ、実際に国際協力の現場で活動する4人が紹介され、「考える」ことから「行動する」ことへと橋渡しをしてくれます。
どの問いにも、明確な正解は用意されていません。答えを出すこと以上に、「なぜ自分はそう考えたのか」「別の立場だったらどう見えるか」を問い直すプロセスを大切にしていることが、本書全体から伝わってきます。実際のワークショップで交わされたリアルな意見が紹介されていることも、本書の大きな魅力です。「そんな考え方もあるのか」と新たな視点に出会いながら、最後まで興味深く読むことができました。
📖みなさんも、多文化共生について考えるきっかけになったおすすめの一冊があれば、ぜひ教えてくださいね!
知らない場所で「暮らし始める」ということ
本から学ぶ、多文化共生のヒント/第2回 『バクちゃん』
「正解のない問い」と、どう向き合うか
本から学ぶ、多文化共生のヒント/第3回 『日本に住んでる世界のひと』






著: 木下理仁
発行:旬報社