「え、今なんて言いました?」 外国人材が戸惑う、日本の“方言コミュニケーション”

2026年05月29日

「え、今なんて言いました?」 外国人材が戸惑う、日本の“方言コミュニケーション”

日本語学校で学ぶのは、基本的に"標準語"。でも実際の職場や地域では、教科書に載っていない言葉がたくさん飛び交っています。「これ、なおしとって」「ゴミなげておいて」「今日えらいわ〜」……日本語なのに、意味がわからないことも。外国人材の受け入れが全国に広がる中、こうした"地域特有の言葉"が、仕事や日常生活の小さな戸惑いにつながる場面も少なくありません。今回は、外国人だけでなく、日本人でも戸惑いやすい"方言"や地域特有の言い回しを入り口に、日本の言葉が持つコミュニケーションの難しさとおもしろさについて、前後編でお届けします。(EP216)

日本語ができるのに、意味がわからない!?

外国人材の定着や活躍において、「日本語能力」はよく話題になります。しかし実際には、教科書では学ばない"方言"や"職場ごとの当たり前"が、コミュニケーションの壁になることもあります。

「日本語はできるのに、なぜかうまく伝わらない」——そんなすれ違いの背景には、地域ならではの言い回しや表現が関係していることも少なくありません。


たとえば「捨てる」。

北海道・東北さん

明日は休みだから、そのゴミなげておいて。

関西さん

もう使わないから、それほかしといて!

どちらも、"捨てておいて"という意味ですが、「なげる」は「投げる?」、「ほかす」は「放っておく?」と勘違いしてしまいそうになりますよね。

では、次の言葉はどんな意味でしょう?

東北さん

今日は1日中会議があって、こわいこわい

中部さん

今日はちょっとえらいので、仕事を休みますね。

「こわい」「えらい」は、どちらも、"疲れた"という意味で使われており、九州や四国などでも「えらい」というそうです。
おもしろいのは、日本人同士でも「え、それってそういう意味なの!?」となること。
このように、方言の難しさは、日本語能力とはまた別のところにあります。

外国人の方が標準語をしっかり勉強していても、地域で日常的に使われている言葉までは学ぶ機会がほとんどありません。

一方で、地域の人にとっては、小さい頃から自然に使ってきた“当たり前の言葉”。そのため、「この言い方は、他の地域では通じないかもしれない」「相手は知らないかもしれない」という視点が抜け落ちやすいのです。

地域が変わると、“当たり前”も変わる

方言は、単なる“難しい言葉”ではありません。その土地で育まれてきた文化であり、暮らし方や、人との距離感がにじむものでもあります。

実は、こうした“地域ごとの言葉の違い”は、日本だけのものではありません。

たとえば中国では、同じ中国語でも地域によって発音や言い回しが大きく異なり、他地域の言葉が聞き取れないこともあります。イタリアでも、標準イタリア語とは別に、地域ごとの方言文化が根強く残っています。英語圏でも、アメリカ英語とイギリス英語の違いだけでなく、地域によって表現やアクセントはさまざまです。

「同じ言語なのに、聞き慣れない」そんな感覚は、世界中で起きていることなのです。

日本でも、地域コミュニティでは自然に方言が使われています。特に地域に密着した職場やチームでは、方言が会話のリズムや距離感をつくっていることも少なくありません。

その土地で育ってきた人たちにとって、方言は“特別なもの”というより、日々の暮らしの中にある自然な言葉。だからこそ今も、地域ごとの空気感とともに受け継がれているのかもしれません。

「知らない」が、お近づきのきっかけに

日本人同士でも戸惑うことがある方言。では、日本語を学び始めたばかりの外国人の方には、どんなふうに聞こえているのでしょう。

来日したばかりの頃、「意味がわからなかったけれど、そのままにしてしまった」。そんな経験を持つ方も少なくありません。

「何度も聞き返しづらい」
「日本語ができないと思われたくない」
「周囲も“標準語ではない”ことに気づいていない」

そんな気持ちが重なって、“わかったふり”をしてしまうこともあります。

一方で、日本人側も悪気なく、普段どおりの言葉を使っていることがほとんどです。地域で当たり前に使ってきた表現だからこそ、「この言葉は他の地域の人には伝わらないかもしれない」という視点を持つ機会は、意外と少ないのかもしれません。

実際、日本人同士でも、地域が違えば言葉が通じずに戸惑うことはよくあります。

だからこそ、「知らなくて当然」「聞き返してOK」という前提を持つだけでも、コミュニケーションは少しやわらかくなるのではないでしょうか。

特に、多様なバックグラウンドを持つ人が一緒に働くこれからの職場では、「ちゃんと説明する」「知らない前提で話してみる」という小さな意識が、安心して働ける環境づくりにつながっていくのかもしれません。

方言は、ときに“壁”になることもあります。でも同時に、その土地らしさや、人との距離を縮めてくれる魅力もあります。

「それ、どういう意味?」

そんな一言から、会話が広がることもあるはずです。

後編では、GTNの外国籍メンバーに「実際に困った方言」や「印象に残っている地域の言葉」をリアルに聞いてみます。さらに、外国人向けの方言ガイドを手がける自治体の取り組みもご紹介。どうぞお楽しみに!

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