外国人社員に「合わせてもらう」から、自分たちが変わるへ ──多文化マネジメントのリアル

外国人社員を迎えたとき、変わる必要があるのは、迎えられる側だけなのでしょうか。これまで言葉にしなくても伝わっていた指示や評価の基準、仕事の進め方。多様な人が加わることで、組織のなかで「当たり前」とされてきたことが、改めて問い直されることがあります。そんな多文化な組織づくりについて考える「BAR CDI Vol.2 - Cultural Diversityの交差点 -」が開催されました。「BAR CDI」は、一般社団法人Cultural Diversity推進協会が主催する、企業や実践者がそれぞれの経験を持ち寄り、語り合う対話と交流の場です。今回は、組織開発やリーダーシップ育成を支援する株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング(以下、PFC)と、多様な国籍・文化的背景を持つメンバーが働くGTNが参加。外国籍社員に「合わせてもらう」だけではなく、ともに働く組織には何ができるのか。PFCとの対話を通じて、GTNの村上あすかさんは、自分たちの仕事や組織の「当たり前」を改めて見つめました。二社の対話から、多文化な職場づくりのヒントを探ります。 (EP232)
「はい、わかりました」の裏にあったメッセージ
ファシリテーターをつとめた一般社団法人Cultural Diversity推進協会 代表理事の龔 軼群(キョウ イグン)さん(左)と、株式会社ピープルフォーカス・コンサルティングのプリンシパル・コンサルタント、マイケル・グレイザーさん(右)。
そう伝えると、メンバーから返ってきたのは「はい、わかりました」という言葉。ところが2週間後、進捗を確認すると、タスクはほとんど進んでいませんでした。
このエピソードを語ったのは、PFCのプリンシパル・コンサルタント、マイケル・グレイザーさんです。当時、マイケルさんがマネジメントしていたのは、日本人だけのチームでした。
マイケルさんは「はい、わかりました」を、仕事を引き受けたという意味に受け取っていました。しかし後になって、メンバーは会話のなかで、実は「やりたくない」という意思を示していたことを知ります。
言葉だけを聞いていても、その背景にある意図まで理解できるとは限らない。そう気づいたマイケルさんは、分からない場面があるたびに信頼できる上司に相談し、「この場合はどういう意味なのか」を確認しながら、少しずつコミュニケーションの取り方を学んでいったといいます。
この話を受けて、GTN 人事総務部 シニアマネジャーを務める村上さんも、多文化チームにおけるコミュニケーションについて語りました。
GTN人事総務部 シニアマネジャーの村上あすかさん(右)。
さらに大切なのは、「何をするか」だけではなく、「なぜやるのか」「なぜあなたに任せるのか」まで伝えること。背景や目的を言葉にすることで、仕事への納得感や責任感にもつながるといいます。
相手に「察してもらう」「分かってもらう」ことだけを期待するのではなく、自分の伝え方も振り返ってみる。多文化なチームで働くうえでの一歩は、そんなところから始まりそうです。
外国籍社員を迎えて、見えてくる組織の「当たり前」
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング 代表取締役の松村卓朗さん(右)。
松村さんは、「成果を基準に評価するのであれば、本来、国籍によって評価の考え方を変える必要はないはずです」と指摘します。松村さんによれば、同じような戸惑いは、時短勤務をする社員など、それまでとは異なる働き方をする人を初めて部下に持ったときにも起こります。
多様な人が加わることで、それまで言葉にしなくても成立していた評価の基準や仕事の進め方が通用しなくなり、組織のなかにあった「当たり前」が見えてくることがあります。
GTNでも、日本人中心のチームでうまくいっていたマネジメントの方法が、多国籍のチームでは通用せず、壁にぶつかったマネージャーがいたそうです。
一方、メンバーとの対話を大切にし、意思疎通がうまくいっているマネージャーは、一方的に答えを与えるのではなく、「自分はこうしたいと思っているけれど、みんなはどう思う?」とメンバーの意見を聞いていました。
松村さんも、多くの企業を支援してきた経験から、外国籍のメンバーだけに変化を求めるのではなく、新しい人を迎えることを、上司や会社自身が変わる機会として捉えることが大切だと話します。
多様な人が加わることで見えてくるのは、「外国籍社員にどう合わせてもらうか」という課題だけではありません。これまで暗黙のうちに共有されていた評価基準や仕事の進め方を見直し、誰にとっても分かりやすい形に変えていく。多文化な組織になることは、組織そのものをアップデートするきっかけにもなります。
自分たちの「当たり前」に、どう気づく?
「いろいろな組織と関わっていると、相手によって伝え方を変えることがあります。でも、それって果たして、本当に伝えるべきことが伝えられているのかな、と。自分自身に向き合う時間になりました」(村上さん)
もう一つ、村上さんが関心を持ったのが、松村さんが紹介した、マイノリティの立場を疑似体験するワーク(立場や条件の違いによって生じる不便や感じ方の違いを疑似体験するワーク)の取り組みです。立場や条件の異なる人になってみることで、自分が無意識に「当たり前」としていたことに気づく。こうした体験型の学びを、GTNの人事チームでも試してみたいと話します。
異なる企業の経験に触れることで、自分たちの仕事を振り返り、次に試してみたいことが生まれる。BAR CDIで交わされた対話は、そのきっかけにもなっていました。
「個人の努力」だけにしないために
BAR CDIを主催するCultural Diversity推進協会の代表理事の龔(キョウ)さんは、認証企業などが年に一度だけではなく、採用やマネジメント、社内交流といったテーマについて継続的に話せる場をつくりたいという思いから、BAR CDIを始めたと話します。
「個人の努力だけでは、その人のキャリアは形成できません。会社として、社員が活躍できる土壌をどうつくるか。今回は、上司のコミュニケーションやチームのあり方も含めた『受け皿』に焦点を当てました」(キョウさん)
キョウさんが考える「活躍」とは、単に与えられた仕事をこなしている状態ではありません。それぞれの強みや個性が生かされ、その人が組織や事業に欠かせない存在になっていくことです。
また、Cultural Diversity推進協会では、そうした組織づくりを考える一つの仕組みとして「Cultural Diversity Index(CDI)」を展開しています。多様な人が力を発揮できる組織になっているかを、さまざまな項目から見つめ、自社の現在地を知り、対話や改善につなげていくための指標です。GTNも「CDI 2025」でプラチナ認証を取得しています。
そして、認証や評価だけで終わらず、企業がそれぞれの悩みや実践を持ち寄り、異なる視点に触れるための場がBAR CDIです。
CDIで自分たちの現在地を見つめ、対話を通して「では、自分たちは何を変えていくのか」を考える。個人の努力だけに委ねず、組織として変わっていく。こうした対話の場には、そのためのヒントがあります。
まとめ|違いを力に変える、最初の一歩
松村さんが提案するのは、あえて自分が少数派になるような環境に身を置いてみることです。いつもとは違う場所に入り、「自分の当たり前が通じない」という感覚を経験してみる。
松村さんは、それを「日常の中で非日常を探す」と表現します。
大きな制度改革から始めなくても、自分の「当たり前」を疑うことはできます。
普段の指示や会話のなかで、相手に「察してもらう」ことを期待していないか。
評価や仕事の進め方に、言葉にされていないルールはないか。違う意見が出たときに、「合わない」と捉えるのではなく、自分たちのやり方を見直すきっかけにできないか。
違いを誰かに合わせてもらうのではなく、その違いをきっかけに、自分たちも変わってみる。そこから、多様な人が力を発揮できる組織づくりが始まるのかもしれません。
GTNは「CDI 2025」で最高ランクの「プラチナ」認証を取得しました。また、明治大学と実施した「マイクロアグレッション・ワークショップ」は「Good Practice」にも選定されています。評価された取り組みや認証の詳細はこちらから。
・“悪気のない一言”を、話し合えるものに。マイクロアグレッションから考える、多文化な職場づくり https://wow.gtn.co.jp/462






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