「越境」とは、相手を理解しようとする姿勢そのもの。多文化都市、韓国・安山で育った南さんのストーリー ──Beyond Borders Vol.10

2026年05月08日

「越境」とは、相手を理解しようとする姿勢そのもの。多文化都市、韓国・安山で育った南さんのストーリー ──Beyond Borders Vol.10

連載企画「Beyond Borders」第10回に登場するのは、韓国・京畿道安山市出身の南(ナム)さん。多くの国の人々が共に暮らす多文化都市で育ち、学生時代から外国人留学生を支える活動にも関わってきました。コロナ禍に来日し、現在はGTNのプラットフォーム推進部で予実管理やデータ分析を担当。日本で学んだ「和」や「段取りの文化」、そして南さんが考える「越境」の意味についても伺いました。(EP213)

GTNの社員の約7割は外国籍。
なぜ日本を選んだのか、どんな思いで働いているのか──。

連載企画「Beyond Borders」では、GTNの外国籍社員、一人ひとりの「越境ストーリー」を通して、多文化共生のリアルをお届けします。

今回登場するのは、韓国・京畿道安山市出身の南さん。現在はプラットフォーム推進部で予算実績管理を担当し、2025年のGTNアワードでは「Best Innovator賞」を受賞しています。

多文化都市・安山で育まれた、外の世界への関心

南さんの故郷・安山の春。

──ご出身について教えてください。どんな場所ですか?

韓国・京畿道安山市は、ソウルから約30kmにある都市で、工業と住宅がバランスよく発展しています。多くの国の人々が暮らす多文化都市で、外国料理店や食材店も多く、文化が自然に共存しています。海にも近く、「大阜島(テブド)」では海を眺めながらドライブをしたり、新鮮な海産物を楽しんだりすることもできます。活気があり、新しい文化や技術を積極的に取り入れながら、常に新しい価値が生まれている、そんな変化のスピードも、この街の魅力のひとつです。

──母国と日本で、似ている点や違う点はありますか?

韓国と日本は、礼儀を大切にし、組織やチームを尊重しながら周りに迷惑をかけないようにする文化がある点で似ていると思います。一方、意見の伝え方には違いを感じます。韓国では比較的直接的に意見を伝え、スピーディーに結論を出すことが多いのに対し、日本ではより慎重で、相手の立場を考えながら伝える傾向があります。そうした違いもあり、日本語は今でも難しいと感じることがあります。

多文化への関心から日本へ。コロナ禍の来日で知ったあたたかさ

──なぜ日本に来ようと思ったのですか?

子どもの頃から異文化に興味があり、多文化都市で育ったことや両親が海外に行く機会が多かったことも影響していると思います。大学では外国人留学生のサポートをする中で、「いつか自分も海外で暮らしてみたい」という気持ちが強くなりました。もともとは英語圏を考えていましたが、コロナの影響で断念。ちょうど日本が留学ビザを再開したタイミングで、日本人の友人たちともっと交流を深めたいと思い、来日を決めました。

──日本に来たばかりの頃、印象に残っていることはありますか?

最初は挨拶くらいしか話せない状態でしたが、近所のファストフード店でアルバイトを始めました。面接では想定される質問と答えをすべて準備して臨んだのですが、店長に「日本語が上手ですね」と言ってもらえたことが励みになりました。職場の仲間も身振り手振りで丁寧に教えてくれて、言葉が完璧でなくてもつながれる温かさを感じました。店長が「自分のことを兄だと思っていつでも連絡していいよ」と言ってくれた言葉も、今でも忘れられません。

GTNとの出会いが、支える仕事への原点に

──GTNに入社したきっかけを教えてください。

コロナ禍での来日当時、部屋探しに苦労していました。多くの外国人向け不動産会社が営業を停止する中、GTNはすぐに対応してくれて。クリスマスにもかかわらずスタッフの方が管理会社まで同行し、契約から鍵の受け取りまで丁寧にサポートしてくださったことが、今でも印象に残っています。

帰国予定だったビザ満了が近づいた頃、GTNに就職相談をする機会をいただきました。後藤社長の思いに共感したこと、学生時代から外国人支援に関心があったことも重なり、入社を決めました。支えてもらった経験があったからこそ、今度は自分が誰かを支える側になりたいと思ったんです。

──現在はどのような業務を担当していますか?

プラットフォーム推進部で予算実績管理を担当しています。各事業部の予算策定をサポートし、毎月の実績を反映しながら予実管理シートを作成・展開するほか、予実会議の進行支援やデータ分析、外部向けのデータ加工なども担当しています。

──この仕事を通して感じている変化ややりがい、今後の目標について教えてください。

現在の部署に異動してから、自分が見ていたのは会社全体の中の一部分にすぎなかったと気づきました。予算の策定や差異分析をもとに経営判断が行われる流れを間近で見る中で、より高い視点から会社全体を捉える意識が強くなりました。自分が作成したデータで予実会議が円滑に進んだとき、小さな積み重ねですが成長を実感できます。今後は、自分の分析が事業の改善や成長につながるところまで関われるようになりたいと考えています。

2025年のGTNアワードで「Best Innovator賞」を受賞した南さん(中央)。データ分析や業務改善への取り組みと、常に成長を求める姿勢が評価されました!

──今、特に力を入れていること、これから実現したいことを教えてください。

現在は「経営者マインド」と「ロジカルシンキング」を意識しながら業務に取り組んでいます。これまでは事務的な業務が中心でしたが、今後はより高い視点で会社全体を捉え、ビジネスの判断ができる人材を目指したい。そのために必要な知識を学びながら、原因・プロセス・結果を整理して考える力を磨いています。

この仕事を通して実現したいのは、GTNが外国人支援の分野でトップの存在になることです。日本に来るすべての外国人がGTNと接点を持ち、不安なく生活できる社会をつくりたい。また、外国人に対する社会的な認識の改善にもつながるような事業へと発展していってほしいと思っています。そのために、自分自身も与えられた業務にとどまらず、価値を生み出しながら会社の成長に貢献していきたいです。

“和”と“段取り”を知って、自分の働き方が変わった

── 日本で働く中で、印象に残っていることはありますか?

日本で働く中で「和」と「段取り」という考え方が印象に残っています。関係性を保ちながら全体を円滑に動かす「和」の文化、事前に調整しながら進める「段取り」のスタイル。スピードを重視する韓国とは異なる学びでした。

新入社員として初めて繁忙期を経験したとき、夜遅くまでひとりで残って作業していると、退社しようとしていた部長が声をかけてくださり、一緒に手伝ってくださいました。「一人で抱え込まず、一緒に解決する」姿勢を行動で示してくださったことが、今でも心に残っています。周囲に気づき、自然に手を差し伸べられる人こそが良いリーダーなのだと感じた経験です。

──文化や言語の違いを感じたとき、どんな声かけがあると安心できますか?

率直に意見を交わせることが、いちばん安心につながると思います。相手を理解しようとする姿勢と、自分の考えを分かりやすく伝えること。その両方が、より良いコミュニケーションにつながるのだと感じています。

「越境」とは、相手を理解しようとする姿勢そのもの

── この記事を読んでいる皆さんへメッセージをお願いします。
국경을 넘어, 사람 대 사람으로 마주하는 세상을 함께 만들어가고 싶습니다.
国境を越え、人と人として向き合える社会を、一緒に作っていきたいです。
──南さんにとって「越境」とは何ですか?

私にとって「越境」とは、国を越えることだけではなく、相手を理解しようとする姿勢そのものだと考えています。国境というのは、国や言語、文化だけでなく、一人ひとりの価値観や考え方から生まれる「見えない壁」のことでもあるのではないでしょうか。

日本で生活する中で、言葉が十分に通じなくても行動や態度で気持ちが伝わる瞬間を何度も経験しました。だからこそ、自分の考えにとらわれず、相手に先入観を持たずに耳を傾け、理解しようとすることが、本当の意味での「越境」なのだと思います
私が大切にしている言葉です。中国語では「入乡随俗」と言いますが、世界のどの国や民族にも共通する大切な考え方だと思います。新しい国や地域に行ったときは、まずその土地の文化や習慣を受け入れ、理解し、尊重すること。そうすることでお互いの理解が深まり、人と人との間の誤解やトラブルも少なくなっていくと思います。

最後に

多文化都市で育った原体験と、日本での経験。その両方を行き来しながら、自分の視点を育ててきた南さん。韓国のスピード感と、日本の合意や配慮の文化——その違いを対立ではなく学びとして捉えている点に、南さんらしさが表れていました。価値観という「見えない壁」をどう越えていくのか。南さんの語る「越境」は、多文化共生を考えるうえで大切なヒントを与えてくれます。

これからもGTNの仲間たちの越境ストーリーをお届けしていきます。次回もどうぞお楽しみに☺️

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