「伝えた」で終わらず、「届いた」まで。令和8年熊本地震の現場から考える、外国人住民への災害支援

2026年10月16日

「伝えた」で終わらず、「届いた」まで。令和8年熊本地震の現場から考える、外国人住民への災害支援

災害が起きたとき、外国人住民に必要な情報や支援を、私たちはきちんと届けられているでしょうか。「食料が足りない」「行政の問い合わせ先に電話したくても、電話番号を持っていない」「来日してわずか3日で地震に遭った」。令和8年熊本地震を受けて開かれた外国人住民のための相談会では、ニュースの被害件数だけでは見えてこない、一人ひとりの暮らしがありました。外国人材を受け入れる企業や自治体は、災害が起きる前からどんな備えができるのでしょうか。現地で聞かれた言葉を手がかりに考えます。(EP233)

災害の後、暮らしの中で何が起きていた?

2026年8月~9月にかけて、令和8年熊本地震を受け、熊本県、熊本県国際協会の主催で外国人住民を対象とした相談会が開かれました。会場には、出入国在留管理庁や外国人技能実習機構、行政書士会、外国人支援団体、地域の外国人コミュニティなど、さまざまな立場の人たちが参加。GTNも熊本県国際協会からの依頼を受け、外国語で相談に対応するスタッフを現地へ派遣しました。

GTN熊本拠点の重元さんによると、相談会では、被災後の暮らしにまつわる切実な話が聞かれたといいます。

重元さん

「近所のスーパーが被災して営業していないので、遠くの店舗まで自転車で買い物に行っている」「食料が足りない。でも、物資が配られる時間は仕事をしていて取りに行けない」といった声がありました。

なかには、来日してわずか3日目に、人生で初めて地震を経験した方も。勤務先も被災していたので、「これからちゃんと働けるのか」と不安に感じていたそうです。連絡手段については、こんな声もありました。行政の問い合わせ先が電話番号になっていても、来日したばかりで、まだ電話番号を持っていない。「SNSで連絡できるようになるとうれしい」と話していた方もいました。

当日は、こうした声を受け、その後も必要な情報を受け取ったり、相談したりできるよう、SNSでも連絡を取れるようにする対応が行われました。

連絡手段ひとつをとっても、普段使っている方法は人によってさまざまです。企業の安否確認でも、緊急時の連絡手段が電話だけなら、連絡が届きにくい人がいるかもしれません。

必要な情報や支援にたどり着きにくい状況は、外国人住民だけに起こるものではありません。ただ、土地勘や情報を得る手段、日本の制度への理解など、一人ひとりの状況によって、必要な支援にたどり着くまでのハードルは変わります。

「どんな支援を用意するか」だけでなく、「誰が、どんな状況でそれを利用するのか」まで考える。災害への備えには、そんな視点も必要です。

制度があっても、たどり着けなければ使えない

実際に現地でベトナム語の相談対応にあたったGTNの本田さんは、被災後の生活について、こんな声が寄せられたと振り返ります。

本田さん

「建物は無事だったけれど、地震で炊飯器や冷蔵庫、洗濯機が壊れてしまった」という相談が何件かありました。5人で一緒に暮らしているのに炊飯器が使えなくなって、知人から借りてなんとかやりくりしていたり、冷蔵庫が壊れて食料を保存できずに困っていたりする方もいました。

それから、会社や監理団体にまだ相談できていないケースもありましたし、罹災証明書などの制度そのものを知らない方もいました。申請の手順や家財保険について一つずつ説明すると、「丁寧に教えてもらえて本当に心強かった」と言ってくださって。それがとても印象に残っています。

制度があっても、その存在を知らなければ利用することはできません。また、制度を知っていても、どこへ相談し、何をすればいいのか分からないこともあります。

会場では、まず各言語の話者が困っていることを聞き、その内容に応じて専門家へつなぎました。在留資格については出入国在留管理庁、技能実習に関することは外国人技能実習機構、罹災証明などの行政手続きは行政書士へと、相談内容に合わせて必要な支援先を案内しました。
企業や自治体だけで、すべての困りごとに対応するのは難しいもの。地域にどんな相談窓口や専門機関があるのかを平時から知っておくことも、備えのひとつです。

「母国語で話せる」ことも支援の入り口

もうひとつ考えたいのが、母国語で話せることの意味です。GTNの山田さんも、フィリピンで広く使われているタガログ語で相談対応にあたりました。

山田さん

相談に来た方から、「同じ国籍の人には本音で話しやすい。日本人にあれこれ話すのは恥ずかしい気持ちがある」という話がありました。日本語で普段の会話はできても、不安に思っていることや困っていることまで伝えるのは、なかなか難しいこともあると思います。

今回は専門的な相談だけでなく、「おしゃべり(ピアサポート)」の場もありました。何かを解決するためだけではなく、不安なことや誰かに聞いてほしいことを、安心して話せる場所があることも大切だと感じました。

ネパール語の相談対応にあたったGTNのロサンさんは、相談会をこう振り返ります。

ロサンさん

最初から困りごとをストレートに話す方ばかりではなくて、母国語で何気ない雑談を重ねるうちに、少しずつ本音や悩みを話してくださる方が多かったのが印象的でした。

その場ですべての問題を解決できなくても、「話せただけでほっとした」と言ってくださる方もいました。ニュースや数字だけでは見えない、一人ひとりの生活の不安があります。絡まった糸を一気にほどくことはできなくても、一本ずつ一緒にほどいていくように話を聞くことに、今回の相談会の大きな意味があったと感じています。

母国語で話せることで、安心して気持ちを話せたり、自分でも整理しきれていなかった困りごとが言葉になったりすることがあります。
困りごとを解決することだけが、支援ではない。まず安心して話せること。そして、自分の困りごとを言葉にできることも、大切な一歩です。

これは、災害時だけの話ではないのかもしれません。職場で交わす何気ない会話や「最近どう?」というひと言。その積み重ねが、「困った」と言える関係をつくり、いざというときの支えになっていきます。

「伝えた」から、「届いた」まで

今回の相談会には、地域の外国人コミュニティを通じて開催を知り、仲間や家族と一緒に訪れた人が多くいました。一方で、相談会が開かれていること自体を知らない外国人住民もいたといいます。

災害時、スマートフォンは連絡手段であるだけでなく、災害情報を確認したり、必要な支援や相談先を調べたりするための重要な情報源になります。SNSでの連絡やオンラインの通訳サービスも、端末と通信環境があって初めて利用できます。今回の相談会では、通信環境を確保するため、必要に応じてGTNがポケットWi-Fiを貸し出しました。(詳しくはこちら▶︎ https://www.gtn.co.jp/news/20260729)

相談会の存在を知ること。会場まで足を運ぶこと。自分の言葉で困りごとを話すこと。そして、必要な支援につながること。今回の相談会で聞いた一人ひとりの話をたどっていくと、「情報を伝える」ことの先にも、いくつもの場面があることが見えてきます。

普段、どんな方法で連絡を取り合っているのか。困ったとき、誰に相談しているのか。必要な情報は、どこから得ているのか。「伝えた」のその先で、どう「届く」のか。

今回聞いた声は、災害時の情報や支援のあり方だけでなく、日頃のつながりについても考えるきっかけを残してくれました。
▶︎関連記事も合わせてこちらのご覧ください。

・熊本県が作成した、外国人材向けの「くまもと方言ハンドブック」をご紹介!
https://wow.gtn.co.jp/450

・誰もが安心して情報を得られるまちへ ── 今治市とGTNの多文化共生実証
https://wow.gtn.co.jp/431

外国人相談窓口のDX化に最適|自治体向け 外国人住民支援アプリ GTN Assistants for Public

GTN Assistants for Publicは、外国人住民への災害情報・行政情報の伝達を多言語でサポートする自治体向けアプリです。外国人相談窓口業務を、24時間・最大25言語で支えます。

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