本から学ぶ、多文化共生のヒント/第1回 『ソフトシティ 人間の街をつくる』

本を通して、異なる文化や価値観、人々の暮らしにふれると、世界の見え方が少し変わることがあります。この連載では、多文化共生について考えるきっかけになる本を、一冊ずつご紹介していきます。第1回は、都市デザイナーのディビッド・シムが「人間にとって心地よい街」を問い直した一冊、『ソフトシティ 人間の街をつくる』です。(EP210)

先日、西武鉄道とGTNによるプロジェクト「Japan Life with Seibu」のトークイベントで、著者のディビッド・シムさんのお話を伺う機会がありました。そのなかで語られていたのが「街が人を招待する」という考え方です。街に漂う香りや目の前の景色、思わず立ち止まりたくなる空間、そして誰かが楽しそうに過ごしている様子。そうしたちいさな要素が、人を自然と引き寄せる街をつくるのだといいます。イベントのあとに本書を読んでみると、そのとき印象に残った言葉が重なり、現実の風景につながるように感じられました。多様な人が無理なく、心地よく共にいられる街とはどんな場所だろう。そんなことを考えたくなる一冊です。
多様な人が暮らすとき、街はどうあるべきか
どんな道があり、どんな距離感で人とすれ違い、どんな場所で立ち止まれるのか。何気ないようでいて、そうした環境が、人と人との関係を少しずつつくっていきます。多文化共生は、人の意識や制度だけでなく、「空間」や「設計」によっても支えられているのかもしれません。
人間のための街とは?『ソフトシティ』が問いかけるもの
効率や機能性だけを追い求めるのではなく「人が歩きたくなる距離」「自然に会話が生まれる場所」「多様な人が無理なく共存できる環境」といった視点から、街づくりのあり方を問い直していきます。
たとえば、ベンチの配置ひとつで人が立ち止まり、会話が生まれること。歩きやすい道があることで、年齢や背景の違う人同士が同じ空間を共有しやすくなること。小さな設計の積み重ねが、人と人との関係をやわらかくつないでいく、そんな「ソフト」な発想が、この本の核にあります。
みなさんも、多文化共生について考えるきっかけになったおすすめの一冊があれば、ぜひ教えてくださいね!







著:ディビッド・シム 翻訳:北原理雄
発行:鹿島出版会(2021年10月)