多文化チームで日本の食事を楽しむために。 食の違いにふれる、はじめの一歩

2026年04月13日

多文化チームで日本の食事を楽しむために。 食の違いにふれる、はじめの一歩

新年度は、歓迎会やランチ会など、人と食事をともにする機会が増える季節です。同じテーブルを囲む時間は、距離を縮めるきっかけになる一方で、食にまつわる価値観や習慣の違いに気づく場面もあります。宗教上の理由で食べられないものがある人。ベジタリアンやヴィーガンなどの食のスタイルを選んでいる人。そして、日本では当たり前に使われる食材や調味料が、実は口にできないこともあります。今回は、GTNの海外出身メンバーの声をヒントに、みんなが安心して食事を楽しむための視点を紹介します。(EP209)

食の選択は、その人らしさの一部でもある

ある日、外国籍メンバーが約7割を占めるGTNの社内で、こんな会話がありました。

馬刺しって、イスラム教徒やヒンドゥー教徒は食べられるの?

何気ないやりとりでしたが、そこからあらためて見えてきたのは、食にまつわる前提が人によってずいぶん違う、ということでした。

食事の場では、つい「これ苦手なんですか?」と聞いてしまいそうになることもあります。でも、食べられない理由は、好き嫌いだけとは限りません。宗教上のルール、アレルギー、健康上の理由、そして個人の信条。とくに宗教に関わる食の制限は、本人にとってとても大切なものです。

たとえば、豚肉を食べない人(イスラム教など)、牛肉を避ける人(ヒンドゥー教など)、動物性食品をとらない人(ベジタリアンやヴィーガンなど)もいます。ただ、同じ宗教や同じ食のスタイルでも、考え方や判断の仕方は人によって少しずつ異なります。だからこそ、「これなら大丈夫そう」と決めつけるのではなく、まずは“食べられないものがあるかもしれない”という前提を持つことが大切です。

ちなみに、冒頭の質問にあった馬刺しも、「必ず食べられない」と一概には言えません。宗教による考え方の違いに加えて、文化的な背景によって受け止め方が異なることもあります。たとえばヨーロッパの一部では、馬をコンパニオンアニマル(伴侶動物)として捉える文化もあり、食べることに抵抗を感じる人もいます。

同じ食材でも、受け止め方はさまざま。だからこそ、ひとつのルールで判断するのではなく、相手に合わせて確認していくことが大切なのかもしれません。

見た目ではわからない、“気づきにくいポイント”も

気をつけたいのは、食材そのものだけではありません。実は、調理方法や調味料に、見た目ではわかりにくいポイントが隠れていることもあります。

みりんは“お酒”なので、イスラム教徒は避けることがあります。だから照り焼きチキンも食べられない場合があるんです。

和食ではよく使われるみりんや料理酒。普段はあまり意識しないものですが、人によっては大事な判断基準になります。見た目にはわかりやすい料理でも、調味料の使い方によっては口にできないことがあるのです。

もうひとつ、見落としやすいのが「出汁」です。

きつねうどんは見た目は大丈夫そうでも、出汁に鰹節や煮干しが使われているのでベジタリアンやヴィーガンの方に難しいこともあります。

一見シンプルな料理でも、見えない部分に動物性の食材が使われていることは少なくありません。野菜中心に見える料理でも、原材料や調理工程まで含めると、実は食べられないということもあります。

さらに、日本ではおなじみのメニューにも、思わぬポイントがあります。

日本の市販のカレールーには、牛脂やビーフエキス、ゼラチン(豚由来の成分)などが含まれていることがあり、宗教上の理由で食べられない場合があります。南アジア発祥の料理として親しまれているカレーでも、日本で一般的な“カレールーのカレー”は、誰にでも食べやすいとは限らないんです。

タコ、エビ、カキ、ホタテなど、日本では身近な食材でも、宗教上の食事ルールによっては避けられることがあります。たとえば、ユダヤ教では「うろこのない魚」は食べないという考え方があるため、魚介類にも注意が必要です。

ユダヤ教は「肉と乳製品を一緒に食べない」という食事ルールもあるので、チーズハンバーグや肉入りのクリームコロッケのような料理も難しいです。

「定番だから大丈夫」「人気メニューだから安心」とは、なかなか言い切れない。食のむずかしさは、こうした“見えにくいところ”にもあるようです。

大切なのは、「違いがあること」を前提にすること

食事の場では「せっかくだから食べてみて」とすすめたくなることもあります。歓迎の気持ちや、楽しんでもらいたい気持ちがあるからこそのひと言ですが、その“良かれと思って”が、相手を少し困らせてしまうこともあります。

知らないまま料理を選んでしまったり、断りづらい空気をつくってしまったり。相手が気を遣って、その場では理由を詳しく言えないこともあるかもしれません。だからこそ大切なのは、すべてを完璧に理解することではなく、「みんな同じではない」という前提を持つことです。

たとえば…

・事前に食べられないものを聞いてみる。
・メニューの選択肢をいくつか用意する。
・原材料や調理方法が気になるときは確認してみる。
・無理にすすめない。

そんな小さな配慮があるだけで、その場の安心感はぐっと変わります。

また、最近では飲食店選びの参考になるサービスもあります。たとえば Halal Gourmet Japanは、ハラール対応の飲食店を検索できるアプリで、宗教や食のスタイルに配慮したお店探しのヒントになります。こうしたツールを頼りながら、できることから少しずつ選択肢を広げていくことはできるはずです。

新年度、歓迎会やランチ会など、食事をともにする機会が増えるこの季節。「一緒に食べる」ことが、誰にとっても心地よい時間になるように、少し想像してみることが、やさしい場づくりの第一歩なるのかもしれません。

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