【Let’s ゴ!】台風が来たら会社は休み? 世界の「防災の当たり前」から考える、職場の備え

9月1日は「防災の日」。9月は、防災について改めて考える機会の多い時期です。日本では、地震に備えた避難訓練や防災グッズなどがおなじみですが、世界ではどうなのでしょうか? そこで今回は【Let’s ゴ!】でおなじみ、香港出身の呉が、多様な国・地域にルーツを持つGTNメンバーに、出身地やこれまで暮らした場所の「防災の当たり前」を聞いてみました! 中国、ベトナム、モンゴル、アメリカ、さらに日本の鹿児島・宮崎の出身者から、いろいろな話を聞くことができました。台風が来たら会社は休み? 冬支度も防災になる? 同じ日本でもこんなに違う?——世界各地で暮らしてきたGTNメンバーのリアルな声から、私たちの職場でも参考にできそうな防災のヒントを探ってみます。(EP228)
「空振りでもいい」。危なくなる前に動く、世界の防災
香港には、台風の危険度を数字で知らせる「熱帯低気圧警告シグナル」があります。「シグナル8」以上になると、原則として学校の授業が休止され、企業でも社員を早めに帰宅させたり、出勤を見合わせたりします。さらに、シグナル8の可能性が高い場合は事前に予告されるため、公共交通機関が混雑する前に帰宅することもできます。
台風だけではありません。大雨の危険度を色で知らせる「暴雨警告シグナル」や、山火事への注意を呼びかける「火災危険警報」もあり、警報の色や発表された時間帯に応じて、学校などの対応が細かく決められています。
つまり香港では、警報が単に「危険を知らせるもの」ではなく、「次にどう動くか」と結びついているのです。

呉(香港出身)
香港では、台風が来ると「今はシグナルいくつ?」という会話が自然に出てきます。数字や色で状況が分かるので、子どもの頃から「このシグナルならこうする」という感覚が身近にありました。災害のときには「今どうしたらいいんだろう?」と迷うことがあります。誰にとっても、次にどう動けばいいのかが分かりやすいと安心ですよね!
テキサス州ヒューストン出身のMさんによると、ハリケーンの接近が予想されると、学校の休校やオフィスの閉鎖、在宅勤務への切り替えなどが早めに決められるそうです。Mさん自身も高校生だった2017年にハリケーン「ハービー」を経験し、学校は約2週間休校になったのだとか。
「学校からのメールで数日前に休校が伝えられ、スマホやテレビの緊急警報が連日鳴り響きました。自宅は浸水を免れましたが、数本先の通りでは床上浸水の被害があり、友人の家は全壊して建て直すことに。ハービー後には、洪水リスクのある地域で建物の床面をより高くするなど、建築ルールも強化されました」
同じアメリカでも、アラバマ州で長く暮らしたメンバーが身近に感じていたのは「竜巻」だったそうです。実際に竜巻が発生していなくても「発生の恐れがある」という段階で早期下校などが決まり、「空振りに終わっても構わないので、移動中などの被災を避ける」という事前予防の考え方が徹底されていたといいます。学校では年に数回、竜巻を想定した避難訓練も行われ、自宅ではクローゼットや地下室、学校では窓のない廊下などへ避難することが習慣になっていたそうです。
さらに聞いてみると、中国やベトナムにも「早めに動く」仕組みがありました。
中国出身のSさんによると、台風や大雨の際には行政からの情報をもとに、学校や企業が休校・休業などを判断。ベトナム出身のGTNメンバーも、警報のレベルに応じて学校や企業が休みになると教えてくれました。
災害が起きるかどうかを見極める前に、安全なうちに動く。国や地域は違っても、そんな考え方が共通していました。
木を切る、冬支度をする。世界の「備え」は暮らしの中に

Hさん(ベトナム出身)
大型台風が来るたびに、家の広い敷地にある木の枝を切るのが大変でした。でも果物がなっている木なら、切った実をみんなで分けて食べることも。外へ出られないときは、家族みんなで話したり食べたりして過ごしたことも印象に残っています。台風の情報も、町村の屋外スピーカーやテレビ、SNS、学校からの連絡など、いろいろな方法で届きます。
「ゾド(zud)」は、厳しい冬に起こる災害です。大雪や極端な寒さによって草が雪に覆われると、家畜が餌を食べられなくなり、多くの家畜が死んでしまうこともあるといいます。そのため牧畜を営む家庭では、冬になる前から干し草や飼料を用意して越冬に備えます。さらに、モンゴルには冬至ごろから81日間の寒さを数える「Есөн ес(九つの九)」という伝統的な数え方も。ゾドが予想される場合には気象・防災機関が情報を発信し、家庭や地域、行政がそれぞれ備えます。

Aさん(モンゴル出身)
私自身はゾドで直接つらい経験をしたことはあまりありませんが、田舎では大雪で道路が通れなくなり、食料や生活用品を買いに行ったり、病院へ行ったりすることが難しくなる場合があります。子どもが学校に通うのも大変になります。ゾドは、単に寒くて雪が多いというだけではなく、人々の生活そのものに大きな影響を与える災害だと感じています。
同じ日本でも、「防災の当たり前」は違う

Nさん(鹿児島県出身)
一度だけ、昼間でも空が真っ暗になるくらい火山灰が降ったことがあります。灰は雨のように流れたり、雪のように解けたりしないので、降灰後も火山灰を除去する車が町中を走っていたのが印象に残っています。関東に移り住んでから、鹿児島では当たり前だった「空から灰が降る」という話をすると驚かれることが、最初は不思議でした。
普段の桜島、噴煙が上がる様子、フロントガラスに積もった火山灰。鹿児島では、桜島の火山活動が日々の暮らしのすぐそばにあります。
もちろん、地域による違いは九州だけではありません。雪の多い地域では大雪や雪崩、沿岸部では津波など、その土地で身近な災害によって、備えや暮らしの中で気をつけることも変わります。
「日本の防災」と一括りにはできないほど、地域によって「防災の当たり前」はさまざまです。
違う「当たり前」を持ち寄ることも、防災になる
共通していたのは、災害情報をただ「伝える」のではなく、「伝わるように伝えること」。たとえば、こんな工夫です。
・警報と「次に取る行動」をセットにする
「在宅勤務に切り替える」「○時までに退勤する」などの行動基準に加え、休業や遅刻、在宅勤務になった場合の勤怠の扱いなども、あらかじめ明確にしておく。
・一歩早く、具体的に伝え、「届いた」ことまで確認する
災害が迫ってからではなく、余裕を持って行動できるタイミングで情報を発信する。「状況を見て行動してください」ではなく、「本日は出社しないでください」など、具体的に伝える。また、メールやチャットを送って終わりにせず、返信やリアクションで届いたかを確認し、反応がない人には個別に連絡する仕組みも考えておく。
・言葉の違いを前提にする
普段、日本語で問題なく仕事をしている人でも、緊急時には専門的な防災用語や曖昧な表現を瞬時に理解し、行動に移すのが難しいことがあります。日本語だけで伝えるのではなく、やさしい日本語や多言語、数字、色、アイコンなどを組み合わせ、誰にでも伝わりやすい方法を考えておく。
・日本の防災を、普段から共有しておく
避難場所や緊急時の行動などを、入社時のオリエンテーションや避難訓練などで知る機会をつくる。
外国籍メンバーも、それぞれの国や地域で災害を経験し、そこで身につけた知恵を持っています。違う「当たり前」を聞いてみることで、自分たちにはなかった備えのヒントが見つかるかもしれません。
「あなたの国や地域では、災害のときどうしていた?」
防災について考える機会の多い9月。防災用品や避難場所を確認するのはもちろん、職場のみんなで、それぞれの「防災の当たり前」を聞いてみるのもいいかもしれません。





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