外国人の金融アクセスを変える、「共創」のちから ― GTN × エポスの挑戦

在留外国人の金融アクセスをどう変えるか?GTNとエポスが挑んだ「日本初の外国人専用クレジットカード」誕生の舞台裏と、共創がもたらした実績に迫ります。
本記事では、日本で暮らす外国人にとって「当たり前」ではなかったクレジットカードという金融インフラが、どのように実現されてきたのかを紐解きます。2017年から始まったGTNと丸井グループのエポスカードによる協業の背景と、その7年間の挑戦と成果を通じて、「金融包摂」のリアルと可能性をお届けします。
外国人雇用に関わる企業担当者や金融業界の方々にとっては、「協業によって生まれる信用モデル」「社会課題と事業性の両立」など、今後のビジネスのヒントとなるはずです!
■今回の対談者
・株式会社エポスカード 常務取締役 プロセシング、リスク管理担当 大倉 伸夫 様
・株式会社グローバルトラストネットワークス 代表取締役社長 後藤 裕幸
■目次
1. 「金融サービスを、すべての人に」~理念が交差した出会い
2. 【解説】日本で暮らす外国人の、金融課題とその背景とは?
3. ゼロから作り上げた、GTNエポスカードの誕生と現在
4. GTN × エポスだからできたこと
5. 共創で切り開く、次のステージ
6. GTNが「共創チーム賞」優秀賞を受賞
7. 最後に~これまでの歩みを一言でまとめると…
「金融サービスを、すべての人に」~理念が交差した出会い

エポス 大倉 伸夫 様(以下「大倉」) 丸井グループが掲げるミッションのひとつに、「すべての人に金融サービスを提供するファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」があります。これは、当たり前のことが当たり前にできる状態=「取り残される人をつくらない」という考え方です。
GTN 後藤 裕幸(以下「後藤」) 「当たり前ができない」というのは、外国人専門のGTNの現場でも、日々感じてきたことでした。特にクレジットカードに関しては、外国人の方から「申し込みができない」「与信が通らない」といった声を多く聞いていて、不便を強いられている状況をなんとかしたいと思っていました。
エポス 大倉 GTNさんと最初に出会ったのは2017年頃。当時、外国人向けに家賃保証を提供している企業があると知って、私たちからコンタクトを取りました。最初は「家賃保証」についての相談でしたが、金融包摂の観点から「クレジットカードも一緒にできないか」と提案したのを覚えています。
GTN 後藤 実は、最初にお話しいただいた家賃保証よりも、クレジットカード発行のほうが早く形になりましたね。当社にとって、クレジットカードの発行は「自力では実現が難しいけれど、何とかしたい領域」でした。そこにエポスさんが「一緒にやりましょう」と声をかけてくださって…嬉しかったですね!
【解説】日本で暮らす外国人の、金融課題とその背景とは?
日本の少子高齢化による労働人口の減少が進むなか、在留外国人が重要な社会の担い手となっています。令和6年末にはその数は約377万人と、横浜市の人口に匹敵する規模になっています。
日本人を前提とした制度設計が生む課題
こうした外国人の増加にともない、日本人を前提とした従来の制度では対応が難しい場面も見え始めています。特に、外国人が日本で金融サービスを利用する際に直面するのが、次のような課題です。
1. 審査に通りにくい
・日本での信用情報がなく、審査が通りにくい
・帰国=貸し倒れリスクへの懸念
・在留期間や雇用形態などがネックになる
・特に、来日直後の外国人や学生にとっては不利に働くケースが多い
2.手続きがわかりづらい
・申込や説明が日本語だけで、言語のハードルが高い
・制度が複雑で専門用語も多いため、手続きに時間がかかる
3.初めから外国人は「対象外」
・マネーロンダリング対策などを理由に、外国人へのサービス提供を敬遠される
・「日本人でないと口座開設できない」と入口で断られるケースも多数
ゼロから作り上げた、GTNエポスカードの誕生と現在
「外国人に最適化された、前例のない仕組み」をゼロから作り上げていきました。
エポス 大倉 実際、社内からは「リスクは本当に大丈夫か?」という懸念の声は多くありましたね。また、「そもそも外国人にクレジットカードは必要なのか?」という議論もありましたよね?
GTN 後藤 そうですね!「クレジットカードを持たない国もある」「宗教上、借金はNGなのでは?」といった意見も現場で出てきていて…
エポス 大倉 ただ、GTNさんが持つ外国人対応のノウハウや「協業するからこそできること」を丁寧に説明し、少しずつ理解を得ていきましたね。
GTN 後藤 スタートから最初の1~2ヶ月は、思ったように発行数が伸びなくて苦戦したんです。外国人のお客様にうまく届けられない時期が続きましたが、エポスさんとも密に連携しながら、伝え方や申込導線を改善したことで、発行数も徐々に伸びていきました。

(2024年にリニューアルされたGTNエポスカードのデザイン)
────現在、GTNエポスカードの発行実績や利用状況はどのようになっていますか?具体的な成果について教えてください。
エポス 大倉 GTNエポスカードの会員数は2万人を超え、利用率も非常に高い水準です。通常のエポスカードが7割程度なのに対し、GTNエポスカードでは9割近くが利用されています。
GTN 後藤 外国人の方は、日本に来たばかりの方も多く、生活用品の購入など初期費用がかさむタイミングです。しかも若い方は、将来への自己投資や日常消費にも意欲的。クレジットカードが使えることで生活の自由度が向上するのは、現場で見ていても強く感じます。
エポス 大倉 リボ払いや分割払い、キャッシングなどの金利が発生するサービスの利用も非常に高く、「単に発行された」だけでなく、しっかり活用されていることがわかっています。

GTN × エポスだからできたこと
エポス 大倉 スタート当時、多くのクレジットカード会社が「外国人向けはリスクが高い」として発行を断念していました。当社でも、留学生向けに発行したこともあるのですが、回収がうまくいかず断念した過去があるんです。やりたくても、言語対応や与信の仕組みがなく、動けない企業が多かったのが実情です。
────GTNとの協業によって、どのような不安や制約を乗り越えることができましたか?
エポス 大倉 GTNさんの与信に基づき、「返済能力があると判断された方であれば基本的にお申込みを受け付ける」スタンスに変わりました。
GTN 後藤 当社は外国人支援に特化し、現場対応や与信ノウハウを積み重ねてきました。その強みが、エポスさんの不安を解消できたと思います。私たちにとっても大手のエポスさんと組むことで信用度が高まり、「エポスさんと一緒にやっているなら安心」と言ってもらえることも多くて…これは本当にありがたいです!
エポス 大倉 回収の場面でもサポートをいただいていますね。当社は外国語対応のコールセンターを持っていないのですが、GTNさんと連携して3者間通話などの体制をつくり、結果的に回収成果にも繋がっています。
GTN 後藤 GTNの強味である多言語サポートは、カードの発行だけでなく、安心して利用できるようにするための定着にも貢献しています。両社の強みを生かした仕組みが、成果につながっているのは嬉しいことですね。「使いたくても使えない」人たちを支えるこのモデルを、もっと業界全体に広げていきたいです。
共創で切り開く、次のステージ

GTN 後藤 運転免許ローンは2020年4月にスタートし、今では急成長事業のひとつとなっています。最近では学費ローンもスタートし、今後さらに多様な分野へ金融サービスを広げていきたいと考えています。
───家賃保証の取り組みを通じて、変化したことはありますか?
エポス 大倉 そうですね、単なるサービス提供に留まらず、管理会社さんやオーナーさんの意識を変える契機になったと感じています。後藤さんはいかがですか?
GTN 後藤 今だに日本全体を見れば「外国人には貸したくない」という声もありますが、それでも現場で説明を重ねることで、少しずつ変化が生まれてきました。こうした意識の変化を促すには、貸す側にとっての「安心」も不可欠です。その点で、エポスさんの信用力や、資金回収の仕組みを活用できたことで、家賃保証のサービスとしての利便性や信頼性も高まり、受け入れが広がってきたと感じています。
───今後、外国人向けの金融サービスとして、どのようなものが求められていくとお考えですか?
エポス 大倉 そうですね。GTNさんと協業している運転免許ローン保証は、ここ最近で急成長しています。以前は件数も少なかったのですが、今では前年比で2.5〜3倍のスピードで伸びています。2024年からは「自動車運送業(ドライバー)」が特定技能制度の対象に追加されたので、働く選択肢を広げるうえで、今後益々運転免許のニーズは高まると思います。
GTN 後藤 学費などの分野でも同じですね。日本に来る外国人の多くは、物価の安い国から来日しています。生活を立ち上げるには、一定の資金が必要。でも、現地で高金利のローンを組むのではなく、日本で適正な金利で借り、日本で使える仕組みがあれば、負担も少なく、安心して生活できます。
エポス 大倉 クレジットカードやローンなどの金融サービスの提供は、外国人本人だけでなく、受け入れる企業や日本社会にとっても意味があると思います。安心して長く暮らせる環境があってこそ、力を発揮してもらえるし、日本経済にもプラスになりますからね。
GTNが「共創チーム賞」優秀賞を受賞

2024年度下半期に実施された「第8回共創チーム賞」では、全社約20のプロジェクトの中からGTNが優秀賞に選出されるという、嬉しい成果に繋がっています。
この受賞を通じて、社会課題の解決と事業性の両立というプロジェクトの意義を、社内外に広く伝えることができました。
───グループ内でも大きな評価を受けた両社の協業。丸井グループ出身であるGTNの執行役員 片平さんは、この共創をどのように見ていたのでしょうか?

GTN 執行役員 片平
GTNが在留外国人の皆様に金融サービスの提供を始めてから丸井グループの皆様は常にGTNに寄り添っていただきました。GTNに出向した当時はいろいろなハードルがありましたが、一緒に考えながら、一つずつハードルを乗り越えていく事ができました。丸井グループ様の思いとGTNの思いが一つになり、今の共創があると感じています。今後はさらに共創を促進して在留外国人の皆様に喜んでいただけるサービスを提供していきたいと思います。
最後に~これまでの歩みを一言でまとめると…

エポスカード 常務取締役 大倉 様
「外国人ビジネスのパイオニア」ですね。一緒に取り組む我々自身も、そうありたいと思っています!

GTN 代表取締役社長 後藤
「最強のチーム」です。コロナ禍など困難な時期も共に乗り越えてきた、信頼で結ばれたチームだと感じています!
外国人が平等に金融サービスを利用できる環境をつくること。それが、私たちの使命です。これからも、常に新しい挑戦を続け、外国人向け金融サービスにおいて先頭を走り続けたいと思っています!

「最強のチーム」が目指すのは、日本で暮らす外国人一人ひとりが、不安や不便を抱えず暮らせる社会。
私たちは、そうした社会の実現をめざして、これからも共に歩みます🌈
いいね!
コメントがありません。
コメントする