【DT TOP Interview】空室対策の切り札!外国人入居×サ高住で変わるJPMCの賃貸経営

2025年05月19日

【DT TOP Interview】空室対策の切り札!外国人入居×サ高住で変わるJPMCの賃貸経営

JPMCが見据える「これからの住まい」とは?少子高齢化時代の“多様化”に対応した不動産経営。外国人との共存や地域課題の解決に挑む対談から、これからの賃貸ビジネスのヒントを探ります。

※本記事は、2022年の対談取材をもとに記事化したものです。

【DT TOP Interview】JPMC、少子高齢化でも成長し続ける新たな挑戦[前編][後編]

こんにちは、GTNの中井です。
WOWの特別企画「DIVERSITY TIMES」では、外国人や多文化共生をめぐる“いま”をお届けしています

日本全国で賃貸物件のサブリースを手がけ、2022年時点では総管理戸数が10万7,000戸にも及ぶ株式会社JPMC(旧日本管理センター)。全国賃貸住宅新聞の管理戸数ランキング(2022年)でトップ10入りを果たした同社は、PropTech(不動産テック)のリーディングカンパニーを目指しています。
業界の最先端を走るJPMCは、空き家問題や少子高齢化をどのように受け止めているのでしょうか。今回は弊社代表(後藤 裕幸)との対談形式で、JPMCグループのExecutive Vice Presidentを務める十河 浩一さんにお話を伺いました。

入居率は90%超を維持、サ高住でも6,000室以上を運営

※サ高住=サービス付き高齢者向け住宅

後藤 裕幸(以下「後藤」):2022年6月に社名を変更され、現在は東証プライム市場に上場されているそうですね。やはり物件管理に強い印象ですが、JPMCさんの特徴はどこにあるのでしょうか?

十河 浩一(以下「十河」):当社の基本的なサービスは、賃貸経営を丸ごとアウトソーシングしていただき、我々の裁量でタイムリーな施策を進める「サブリース(括借り上げ)」です。セントラル業務とローカル業務を高次元に両立するために、各地域のパートナー企業(管理会社)とも提携を結んでいます。

後藤:地方物件のサブリースがメインと伺いましたが、入居率が問題になることはありませんか?

十河:全国では2割ほどが空室といわれる中、当社は93%の入居率を維持しています。ノウハウは色々とありますが、特に受託前における「物件の見立て」を大切にしておりまして。

各地域のパートナー企業と意見をすり合わせつつ、物件をきちんと見つめることから取り組んでいます。データや係数を用いた査定はもちろん、既存入居者さんの属性分析なども行い、ある程度の施策を講じてから物件をお任せいただく形ですね。

後藤:地方となると、生産人口減少などを想定した空室対策も必要ですよね。例えば、秋田県では2015年からの30年間で、人口が40%ほど減るといった試算もあるそうです。JPMCさんは少子高齢化に対して、どのような策を講じていますか?

十河:どのような局面でも、我々は常に満室を目指さなければいけません。テクニカルな手法で入居率を高めつつ、次の手段として「高齢者」と「外国人」にも注目しています。

高齢者に向けては、すでにサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を開設ベースで6,000室ほど運営し、9割以上の稼働を実現しました。介護や生活支援に詳しい事業者さんが入居し、高齢者の方々に終の棲家として選んでいただけるような施設ですね。

「各物件の強み・弱み」を見立てることがポイントに

後藤:ハード(不動産)の管理だけではなく、コンテンツも含めたサービス展開をされているんですね。「空室1,000万戸問題」などで騒がれている、空き家問題についてはいかがでしょうか?

十河:管理会社の立場からすると、「勝ち組物件と負け組物件の差」が大きな課題です。言葉が適切かはわかりませんが、やはり競争力や物件力の話になりますよね。

後藤:確かに、築30~40年が経過しても人気の物件はありますね。管理会社として、差別化のポイントはどういった部分にあるのでしょうか?

十河:物件の強み・弱みをきちっと見立てることが、すごく大事だと感じています。

定期的に手入れされている物件で入居者が見つからない場合、これは建物自体や大家さんの罪ではありません。環境美化や維持を怠っている管理会社、あるいはプロモーションが不足しているリーシング会社さんの責任だと思います。

やはり我々のような管理会社は、競合物件との差別化を図るための提案や、その分析を怠ってはいけません

後藤:入居者のニーズを捉えて付加価値が上がると、むしろ高い家賃でリーシングができる場合もありますよね。私自身も、先輩社長から「日本の不動産業は箱だけではなく、コンテンツを磨かないと」と言われたことを覚えています。

十河:そうですね。やはり大家さんの収益の最大化が、我々に課された使命ですから。

そのためにも入居者の領域を広げたいところですが、実は外国人についてはあまり詳しくありません。物件の稼働率を高めるために、今回はGTNさんに教えていただきたいなと思いまして。

外国人のニーズにはコンテンツの多様化で応える

後藤:当社が設立した2006年頃、国内の外国人就労者は50万人未満だったんですよ。それがコロナ禍の時期に増えて、2021年末には約172万人、2040年には約672万人になると言われています。

この状況下で注目されているのが、やはり少子化が激しい地方。生産人口の少ない地域では「さまざまな国の人に働いてもらおう」といった動きが起こり、これが世界ひいては日本の流れになっていくと思います。

十河:これを聞くと、外国人入居者を増やさない手はないですね。その一方で、トラブルなどの矢面に立つ管理会社さんは、大変なご苦労をされている実情があります。

例えば、敷地内の共有エリアでお仲間が集まってバーベキューを始めたり、廊下で散髪を始めたりとか…。そういった課題がGTNが外国人入居者にルールを教えることで解消されると、安心して外国人入居者を受け入れることができ、大家さんの収益も最大化されますよね。

後藤国によって文化、宗教、背景、民族が違うので、外国人は一括りにできないんです。「単純にこうすればいい」では解決しないため、それぞれの国に合ったソリューションが必要になります。

逆に要望を叶えてあげれば、それが付加価値になって家賃を高くできるかもしれない。我々が見てきた中では、「家具・家電付き物件を借りたい」「半年~1年の契約で部屋を借りたい」などの声が多いです。

十河:短期入居への対応としては、時期限定でマンスリーマンションにするなど、ハイブリッドな運用も必要になるかもしれませんね。

後藤:政府は2030年までにインバウンドを6,000万人に増やし、地方への誘客も進める方針です。実際の消費量を見てもインバウンドの可能性は広がっているので、ニーズに応えて「短い期間で価値を上げること」が重要になると思います。

例えば、日本には優秀な建物や家具・家電をつくる技術があるじゃないですか。そういった技術をうまく活用すれば、色々な要望を叶えることで物件の付加価値をより高められる。まさに、十河さんも考えていらっしゃる部分かと思います。

十河:はい。エリアの差別化については、「不動産を通じて町を売る」というキーワードを意識しています。

付加価値についても、実は転勤が多い法人向けのサービスとして、家具・家電付きの賃貸物件を始めました。そこでお尋ねしたいのですが、長期滞在の外国人入居者にも家具・家電のニーズはありますか?

後藤:そうですね。仮に家賃を月5万円から6万円に上げても、入居希望者が集まると思います。特に賃金水準が低い国からすると、日本の賃貸物件は初期費用が重い。そういった意味でも、家具・家電を付けるなどの多様化ができてくるといいですよね。

管理会社への「出口のサービス提供」を望むJPMC

後藤:ただ、外国人関連で特に多いものが、「ラストワンマンス(退去前の1ヵ月)」のトラブル​です。1ヵ月前に退去の予告ができていない、鍵が返却できていない、書面での解約手続きをしていないとか…。

当社は保証会社の立場なので、こういったトラブルにも最後まで対応しています。少し特殊ですが、そこがGTNのこだわりであり、強みですね。

十河:後藤社長が仰った「出口のサービス提供」は、各ベンダーさんにぜひお願いしたい部分です。管理会社にとって出口は大きなストレスで、原状回復や負担区分の認定、請求手続きから回収までのプロセスが特に苦労します。 

例えば、感情が絡まない清算方式や、デジタルを活用したエビデンスがあるといいですよね。帰国後のケアも含めてサービスをご提供いただけると、管理会社さんもずいぶん楽になると考えています。

後藤:トラブルが多いから排除するのではなく、どう取り組むかが大事ですね。地方に強いJPMCさんが、外国人向けの賃貸経営に挑戦することには、大きな意義があると思います。

不動産業界としてはハードに加えて、物件の魅力につながる「コンテンツ」も強化していきたい。これまで需要の中心はハード(建物)でしたが、今後は家具やサービスなどのコンテンツにシフトしていくことが見込まれます。

業界全体で培ってきた管理システムにコンテンツを足せば、発展の余地はまだまだあると感じています。

十河:JPMCとしても、外国人の方に「この町に住んで良かった」と思ってもらえる住環境を提供し続けなければいけない。我々に物件を預けてくださっている大家さんにも、「地域に貢献したい」と考えている方は多いと思います。

現場の諸問題に対して、どういった方々と手を組んで解決していくかが重要なテーマになりそうですね。本日は後藤さんからも貴重なお話をいただき、大変勉強になりました。

後藤:日本は魅力がある国なので、少子高齢化でも外国の若者をどんどん呼び込んで、うまくダイバーシティが実現できるといいですよね。こちらこそ、本日はありがとうございました!

みんなのコメント

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エスラ

2025年6月2日

本記事では、少子高齢化や空室問題といった日本の社会課題に対し、JPMC様がどのように挑戦されているかが非常に分かりやすく語られており、大変興味深く拝読いたしました。

特に、外国人入居やサービス付き高齢者向け住宅といった多様なニーズに応える柔軟な経営姿勢は、これからの賃貸市場にとって大きなヒントになると感じました。

GTNとしても、外国人入居者様へのきめ細やかなサポートを通じて、大家様・管理会社様・地域社会の皆様に安心と信頼をお届けできるよう、引き続き努めてまいります。

JPMC様との対談を通じ、日本の住まいの未来に向けた可能性を改めて感じることができました。

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