【Let’s ゴ!】〜伝統にふれて、共生が“腑に落ちた”朝!鳴戸部屋の朝稽古〜

【Let’s ゴ!】シリーズエピソード10!! 「新米PR」のゴがGTNのリポーターとして、各部署で行われているイベントや取り組みに潜入し、その魅力をレポートする連載企画。 今回は、GTNが後援する大相撲・鳴戸部屋の“朝稽古見学”に参加! 迫力満点の稽古、やさしさあふれるちゃんこ、そして静かに伝わる伝統の力——。 文化のど真ん中に飛び込んだ体験を、外国籍スタッフのリアルな視点でお届けします。 「わからないからこそ、感じることがある」 Let’sゴ!らしい気づきや余韻を、みなさんも一緒に感じていただけたらうれしいです。

相撲って、テレビで見るものだと思ってました。正直、自分には縁がない世界だと思いました。
けれどある日、グローバル保証営業部からに流れてきたのは「鳴戸部屋・朝稽古見学」のお知らせです。
しかも、GTNが後援している相撲部屋——つまり、これはただの社会見学じゃないです。
相撲=日本の伝統文化。その“内側”に、踏み込みます。
外国籍で、相撲のルールも知らない私にとって、それは小さな冒険でした。
日本文化のど真ん中に、異文化どっぷりの私が入っていきました。
わからないことだらけ。でも、だからこそ、見える景色がある気がして——
それでは、Let’sゴ!
無音の迫力に、息をのむ。
「これから何が起きるんだろう」とドキドキしていたら、グローバル保証営業部のメンバーと合流し、
力士たちが稽古する道場の前に、私は立っていました。
張り詰めた空気。
靴を脱ぎ、静かに部屋に入ると、目の前には土俵。
すでに力士たちが無言でウォーミングアップを始めていて、
その“無音の迫力”に、思わず息をのみました。
ストレッチや体をほぐす動きで静かに始まり、
そのうち、互いにぶつかり合いながら前に進む、相撲特有の動きに変わっていきました。
まるでアメフトのライン同士の練習のような迫力です。
土俵の外でも、すでに熱気が漂っていました。






稽古が始まってすぐ、最前列に座っていた私に、若手の力士がそっとサンダルを差し出してくれました。
「よかったら、足を楽にしてくださいね」と。やさしい…!
私は遠慮なく足を伸ばして、土俵の土の手前まで出してみました。
でも、隣のチヒロさんは足を引いたまま。
実は——女性は土俵に足を踏み入れることが許されていないのです。
そして、円の中じゃなくても、“土俵の土”は神聖なものです。
力士や関係者以外は立ち入りが制限されているんです。
力士の方々は、それを静かに、でも丁寧に教えてくれました。

「ここは手の角度をこう」「最後まで力を抜くな」
怒号も派手な演出もなかったです。
ここは、“静けさの中に力がある”世界でした。


まずは若手力士たちが次々に土俵に上がり、短い取り組みを重ねていきました。
動きは早く、目は真剣。
誰も手を抜きませんでした。





欧勝馬関(見学当時は「前頭」でしたが、2025年7月場所に「小結」に昇格しました!)と欧勝海関(十両)が土俵に立ちました。
倒すより、耐える。押し返すより、崩さない。
長くて重たい稽古に、力士の体は真っ赤になり、汗が床に落ちました。
でも、誰も緩めません。





まさに“国技館の特等席”以上でした。
力士が相手を土俵際まで押し出し、こちらまで飛んでくるんじゃないかと思った瞬間もありました。





力士たちが何番か取り組みを終えるたびに、土俵をならさないと!
ほうきを持った若手の力士たちが、何も言わずにスッと現れて、
誰に言われるでもなく、タイミングぴったりで動き始めるんです。
土を掃き、水をまいて、また掃いて……って、まるで振り付けされたダンスみたいでした。
相撲って、土俵の上だけじゃなくて、その“まわり”も全部が文化なんだなって思いました





私たち見学者も自然と声をひそめていたことです。
普段はにぎやかな営業部メンバーも、この場では一言も発さず、
ただ、じっと土俵を見つめていました。
ここで交わされていたのは、技術だけではありません。
そこには、誇りや覚悟、相手への敬意が込められていました。
そのすべてが、目の前の稽古に詰まっていました。
ルールも技の名前もわからない私にとって、
ここは“理解する”場所ではなく、“感じる”場所です。
そして私は、静寂と熱の中で、確かに何か大切なものに触れた気がしました。
あたたかいのは、ちゃんこだけじゃなかった。
この日のメニューは、角煮、肉と野菜の炒め物、鶏肉とたたききゅうりのサラダ、コロッケ、
そしてもちろん、主役はちゃんこ鍋です!

料理はおいしいすぎで、写真を撮ることはほとんど忘れてしまいました…ww



“ちゃんこ”って、鍋だけじゃなく、力士の食事全体のことを指すんですよ!
炒め物も、揚げ物も、サラダも、ぜーんぶ“ちゃんこ”。
だから、“ちゃんこ鍋”は“ちゃんこ”の一種ってことなんです。
なんで“ちゃんこ”って言うの?
実は由来にはいくつか説があって、
よく言われているのが、「ちゃん」は父ちゃん・母ちゃんの“ちゃん”、「こ」は“子ども”。
つまり「親方と弟子が一緒に食べる料理」という意味だそうです。
鶏は手を地面につかない生き物だから、「負けない」縁起物なんだそうです。
(※相撲では土俵に手をついたら負けなので!)
味は、とにかくやさしい~~~
野菜の甘みがじわっと染み出していて、思わずおかわりしてしまいました。
料理はすべて力士たちの手作りで、当番制です。
若手の力士たちが明るく配膳してくれる様子も、とても印象的でした。




ご飯を食べてたら、目の前で力士の“髷(まげ)”を整えてる人がいてびっくり!
実はあれ、専属のヘアスタイリストさんなんですって!
相撲部屋には「床山(とこやま)」と呼ばれる、髷づくり専門の職人さんがいて、
稽古で乱れた髷を、食事中にさりげなく直していたんです。
髷は、力士の“顔”の一部。崩れたままでは締まりません。
使うのはヘアゴムではなく、紙でできた紐(元結)。
鬢付け油(びんつけあぶら)という専用のワックスも使われていて、ほんのりいい香りが漂います。
ちなみに、これを毎日シャンプーで落としてしまうと、また結い直すのが大変です。
なので、力士は毎日髪を洗わないそうです。
稽古後の床山さんは、実はけっこう忙しいんですね。


ブルガリアから日本に来た当初の苦労や、
弟子たちへの指導方針なども、穏やかに語ってくださいました。
その日見学に来ていた子どもの中に、
将来「力士になりたい」と話していた子がいて、
親方はその言葉にふっと目を細めながら、やさしくうなずいていました。
子どもにまっすぐ向き合う姿は、
きっと弟子たちと接するときと、同じなんだろうなと感じました。
さらに、親方の言葉で印象的だったのがこちら:
親方:「思いやり、目配り、気配り。人の気持ちを考えて行動すること。
これは相撲でも、社会でも同じです。」
この言葉は、食堂の壁に筆文字で掲げられている“座右の銘”でもあります。
相撲は、ただ技を磨く場ではなく、“人間力”を育てる場でもある——
そんな空気を、「ちゃん・こ」の時間にも感じました。


ちなみに親方の最近の悩みは、「弟子たちがスマホに集中しすぎること」だそうです(笑)
“わかる”より、“感じる”から始めてみる

相撲のことも、技の名前もほとんど知らないまま、
私はこの朝、鳴戸部屋の土俵を見つめていました。
“伝統のど真ん中”に、外国籍の自分が入っていく——
少し緊張しながら、目の前の稽古にじっと見入っていました。
ぶつかり合う音。張りつめた静けさ。整えられていく髷。
言葉にしなくても、そこには誇りや覚悟、思いやりが確かにありました。
私はその空気の中で、何度も心を動かされました。
GTNのメンバーとして、「多文化共生」という言葉を日々伝える立場にいます。
これまでもその意味や価値は理解していた“つもり”でした。
でも、この日あらためて、もっと深い実感として、共生という言葉が自分の中に落ちてきた気がしたのです。
共生って、完璧に理解し合うことではありません。
違っていても、知らなくても、ちゃんと向き合ってみることです。
それだけでも、通じるものがあります。
そんな気づきをくれたこの体験は、
外国籍として、そして一人の人間としても、忘れられない朝になりました。
「わからないなりに向き合ってみること」の大切さを教えてくれました。
伝統も、多文化も、ちゃんと目を向けてみれば、
言葉がなくても、通じるものがあります。
Let’sゴ!もエピソード10。
これまでいろんな現場に足を運び、“多文化共生”を追いかけてきた中で、
ようやく少し、広報としてその言葉を自分のものとして伝えられるようになってきた気がします。
“新米PR”として走り出したこの連載も、
今では、ほんのすこし“育ったPR”に近づいてきたかもしれません。
新米PRの看板を、そろそろ“育ったPR”に書き換えてもいいかなと思えるようになってきました。
Let’sゴ!は、これからもそんな一歩を届けていきます。
次は、みなさんと一緒に。
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