【DIVERSITY TIMES】日本人も安心できる外国人受け入れの未来

2025年09月05日

【DIVERSITY TIMES】日本人も安心できる外国人受け入れの未来

今回は、入管庁の初代長官を務め、現在は入管協会で活動されている佐々木聖子さんが登場。行政の視点、そして外国人支援の現場を知る企業の視点から、制度の基本や共生社会のこれからについて語り合いました。

「外国人雇用」や「多文化共生」がダイバーシティ経営を語る上で外せないテーマとなる中、制度の運営側がどのような視点で外国人支援と向き合っているのかを知る機会は多くはありません。

今回のDIVERSITY TIMESでは、入管庁の初代長官を務め、現在は入管協会で活動する佐々木聖子さんをお迎えしました。
行政の現場で長年外国人政策に携わってきた立場から、「誰もが安心して暮らせる社会」の実現に向けた展望を語っていただきました。

本記事では、YouTube動画「日本人も安心できる外国人受け入れの未来」の内容から、一部を抜粋してご紹介します。

ゲストのご紹介

────ゲスト・佐々木 聖子さんってどんな人?
「昭和60年に入省して、約40年入管におりました。佐々木聖子です」

そう落ち着いたトーンで自己紹介をしてくれた、佐々木 聖子さん。
ここでいう「入管」とは、「出入国在留管理」を担う行政機関のこと。

2019年、入管局から入管庁へと組織が改編された際の初代長官を務めました。
外国人の「管理」だけでなく「支援」も担う体制への転換をリードしたキーパーソンです。

現在は入管協会で、専門誌「国際人流」の編集を担当。様々な異なる立場の声を交わらせる場づくりを通じて、外国人受け入れと多文化共生をめぐる議論を社会に開いています。
────入管キャリアの原点は、アジア放浪の2年間にあった
「なぜ外国人は日本に来るのか。
日本に来る外国人の故郷はどんな場所かを目の当たりにしました。
それが、私の原点です。」
若手時代、佐々木さんは休職制度を活用し、1988年から1990年の2年間、アジア各地を放浪しました。
なぜ人は日本を目指すのか、その方の故郷はどのような環境なのか…
現場に立たなければ分からない問いを、現地の人々の姿から学ぶ旅でした。

訪れたのは、インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなど。
当時、パキスタン・バングラデシュはまだ日本の受け入れが本格的ではなく、制度が未整備なゆえに「非正規な来日」も見られた時代でした。

それから約40年。

「今は制度が整い、ルールに沿って来日し、
外国人が活躍する時代になりました。それが、非常に感慨深いです」


佐々木さんは、そのように語ってくれました。

外国人受け入れに関する基礎「在留資格・ビザ」

今回は佐々木さんに、日々よく耳にするけどあまり馴染みのない、外国人受け入れに関する言葉について、正しい知識を教えていただきました。

まずは、「在留資格」や「ビザ」について見ていきましょう。

在留資格とは?
外国人の方が「日本に在留して行うことが許可されている活動」の種類です。
短期滞在、留学、特定技能、日本人の配偶者等、永住者など約30の種類があります。

これらは、入管法で定められていて、今の形に整備されたのは1990年から。
「日本はどのような人を受け入れるのか」を内外に向けて示す政策そのものです。
2019年からは、新しく「特定技能」という在留資格もスタートしました。
───在留資格を証明するための「在留カード」
みなさんは、「在留カード」というものをご存じですか?
出典)在留カードとは?| 出入国在留管理庁

出典:在留カードとは? | 出入国在留管理庁

日本人には馴染みがありませんが、観光など短期滞在を除く多くの外国人は、在留カードの携帯が義務づけられています。
住まいや仕事、あらゆる場面で提示を求められることがあり、日常生活にも深く関わるカードです。

「在留カードは、日本で暮らすための根拠を示す大切な証明。
『決められた手続きを経て、日本に来ている安全な人たち』
という意識を持つことは大事ですね」


コンビニなど身の回りで働く外国人の方々が、
どんな在留資格で日本に来ているのか…。
そのような関心を持つことが、多文化共生を考える第一歩になるのではないでしょうか。
────「ビザ」と「在留資格」は別物です

ビザ(査証)とは?
外国人の方が日本へ渡航する際、海外にある日本大使館等が発行する「この方の入国はOKと思われます」という推薦状で、パスポートに貼られるシール。

ビザは、入国の際の1回限りの使用であるのに対して、
在留資格は「日本でどのような活動が認められているか」を示す法的な根拠です。

動画の中で話題にあがったのは、よく耳にする「ビザの更新」という言葉。
実はこれも誤りで、延長が必要な場合は「在留期間の更新」が正しい表現だそうです。
YouTubeの動画内では、そのほかにも「難民・避難民・移民」などについても詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてくださいね👀(👉 動画はこちら

受け入れと共生は「管理」と「支援」の両輪で

日本における外国人との共生が大きく動き出したのは、1990年。
「定住者」という在留資格ができたことで、多くの日系人が日本で新たな生活を始めました。
とりわけ、製造業が盛んな地域を中心に人々が集まり、そこから「どう受け入れ、どう共に暮らすか」という自治体の試行錯誤が始まりました。

例えば、子どもの就学やゴミ出しルールといった課題に直面しながら、地域は共生の道を模索。
その後の浜松市では、教育や日本語教室などの支援が分断を共生へと変えていきました。

こうした積み重ねが、30年を超える歴史となり、今では「成功事例をどう全国へ横展開するか」という段階に。

「必ずしも、一つのやり方がどこでも通用するわけではないけれど、
先行した地域の経験は他の自治体にとって大きなヒントになる」


そのように佐々木さんは語ります。

そして2018年、国としても「共生社会の実現」を正式に掲げ、入管庁の役割も「管理」だけでなく「支援」へと広がりました。
「受け入れと共生は、入管のお仕事でいうと『管理と支援』です。
その車の両輪が必要なんです。
支援が充実すれば、自然とルールは守られるようになります」


それぞれの両輪が揃ってこそ、共生は動き出す。
そんな視点が、これからの受け入れのあり方を問いかけています。

多文化共生の本質は「特別扱いではなく、隣人」

2006年、総務省が策定した「多文化共生推進プラン」では、「多文化共生とは」の定義が初めて示されました。
異なる文化を尊重しながら、外国人が「地域の一員」として自立して暮らす社会を目指す。
その考え方は20年近く経った今もなお、多文化共生の土台となっています。

強調するのは、「支援の在り方」です。
来日直後にはルールや生活習慣を理解してもらうために、丁寧な支援が欠かせません。
しかし、いつまでも「支援の対象」として扱うことは、社会の一員になることを妨げてしまいます。

「違う文化や価値観をリスペクトをしながら、
その上で『普通の隣人』になれたらいいなと思っています」


多文化共生に長く向き合ってきたからこそ辿り着いた、佐々木さんのシンプルだけど心に響くこの言葉。

それは、「多文化共生」や「外国人雇用」が盛んに語られる現代において、
「普通の隣人」という意識こそ、日本社会がこれから大切にしていくべきキーワードなのかもしれません。

最後に~「普通の隣人」が増えていく未来へ

「最初は外国人と意識していても、接してみると『普通の人なんだ』と思える。
そんな経験の積み重ねが、共生の第一歩」


と佐々木さんは語ります。

外国人を迎える場面はこれからますます増えていきます。
制度だけでなく、実際に現場で外国人と関わり、対話を重ねることが、共生社会を少しずつ動かしていく。
今回の対談が、そんな共生の原点に立ち返るきっかけになれば幸いです。

本編もあわせてご覧ください

動画では、制度の基本から、共生社会のこれからについて詳しくご紹介しています✨

👉 本編をご覧になりたい方はこちら
(リニューアルから新たにつくった「Dポーズ」を一緒に✨)

制度の運用を支えてきた佐々木さんの言葉から、推進に向き合う私たちが学ぶべき視点が見えてきました。
佐々木さん、ありがとうございました✨

気に入っていただけたら、ぜひYouTubeチャンネルの登録もお願いします📺  
今後の配信もどうぞお楽しみに!

これからもDIVERSITY TIMESをよろしくお願いします🌎

DIVERSITY TIMESとは・・・
テーマは「世界を知り、日本を知り、そして自分を知る。」
多文化共生についての意識を「ニュートラルからポジティブへ変えていくこと」を目指して、外国人や多文化共生をとりまく「いま」を伝える、WOWの特別企画です。

👉前回のDIVERSITY TIMES記事はこちら
【DIVERSITY TIMES】わたしって何者? ―外国人二世が語る「日本で生きること」

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