【GTNお悩み相談室 #1】外国人と働く職場で起きる、ハイコンテクストな日本語での「すれ違い」をなくすには

新企画「GTNお悩み相談室」をはじめます。今回は、日本語を公用語とする職場で起きる「すれ違い」をテーマに、GTN社内の声から見えた課題と、解決のヒントを紹介します。(EP185)
新企画「GTNお悩み相談室」をはじめます
私たちのオウンドメディア「GTN WOW」で、新しい企画をはじめます。
その名も「GTNお悩み相談室」。
この企画では、制度や法律のようにルール化されたものではなく、職場のコミュニケーションや文化の違いのなかで生まれる、「日々のもやもや」や「ちょっと困ったな」という瞬間に目を向けます。
社員の7割が外国籍というGTNの職場では、その過程で積み重ねてきた工夫や学びがたくさんあります。
この企画を通じて、現場の声や実際の事例をもとに「どうすれば解決できるのか」を一緒に考えていきたいと思っています。
「日本語が公用語」なのに生まれる、すれ違いの現場

「日本語を公用語にした職場で起きる、すれ違いと解決のヒント」。
GTNでは、会議や日常の業務を基本的に日本語で行っています。
「共通の言葉があるから安心」と思われがちですが、実際には日本語だからこそ起きてしまう「すれ違い」もあります。
そんな小さな「すれ違い」は、放っておくと会社の中で誤解や停滞となり、社員が安心して働けない状況を作ってしまうことも…。
そこで今回は、GTNの社内でアンケートを行いました。どんなすれ違いがあったのか、どのように解決してきたのか。現場のリアルな声をお届けします。
社内アンケートで探る、日本語コミュニケーションのリアル
日本人・外国人、どちらの立場からもリアルな声が寄せられました👀

一方で「ほとんど・一度も困っていない」と答えた人も約半数いますが、この背景には、日々の工夫や努力の積み重ねがあります。
実際、アンケートには「GTNに入社するまで外国人と話す機会が少なかったので、最初は伝わりにくい表現を避けるようにかなり意識していた」といった声もありました。つまり「困っていない今」は、工夫を続けてきた結果だとも言えます。
次に「どんな使われ方が分かりにくい/伝わりにくいと感じるか」を尋ねたところ、上位には以下があがりました。

日本語の「空気を読む文化」
●空気を読む:はっきり言わなくても、場の雰囲気から意図をくみ取る。
●言わぬが花:あえて言い切らないほうが、角が立たず美しいとされる。
●本音と建前:その場を円滑に進めるために、本当の気持ちと場面に合わせた言葉を使い分ける。
例えば、電話での会話で・・・。
「Aさんはいらっしゃいますか?」→△曖昧
「Aさんにおつなぎいただけますか?」→〇明確
日本語では前者のように行為(相手に何をしてほしいか)を省略しがちで、ここに認識の差が生まれやすいのです。
特に「本音と建前」は、日本人にとっては自然な配慮でも、相手には誤解を招くことがあります。たとえば「また今度」と言われて期待していたら、実は断られていた…そんなすれ違いです。
つまり、「共通の言語がある=共通理解がある」とは限らないんです。
アンケートから見えた「解決のポイント」
でも、工夫次第でその「すれ違い」はぐっと減らすことができるんです。
ここからは、アンケートで集まった声とあわせて、現場で役立った実践のポイントをご紹介します。

①依頼テンプレを使用する
例:【依頼】Aさんへ:タスクBをC日D時まで(目的E)
②固有名詞・数字・担当を一文で明確に
例:「私(氏名)が〜します」)
・主語がなく曖昧な表現が多いことがあった。例えば、この作業が終わったら次にこれをやりましょう(=誰が何をやるのか不明)
・主語を自分の苗字に変更して、曖昧な表現がないようにした
このように「誰が/何を/いつまでに」が抜け落ちていると、相手には情報が足りず、余計な確認が必要になってしまいます。
①要件や依頼内容を冒頭で明示
例:件名や文頭に「依頼:〜を□□までにお願いします」と一行で
②YES/NOは言い切りで伝える
例:NG→「大丈夫」「結構です」
OK→「できます」「できません」と言い切る
・何を伝えたいか、どうなってほしいかは明確にしつつ、表現(表情、声のトーン、明るさ、目線)は気を付けています
・はっきりと「YES/NO」を伝えてもらえると助かります。曖昧な表現だと受け取り方が人によって変わってしまうためです
配慮が行き過ぎて、かえって伝わらなくなることがあります。受け手は「結局どうすればいいのか?」と迷ってしまい、余計な手戻りや誤解の原因になります。
①認識合わせのための質問をする
例:「〜という理解で合っていますか?」/「つまり○○ということですね?」
②質問を歓迎する雰囲気づくり
例:「分からないことがあったら、ぜひ聞いてください」
・違和感があったら誤解している可能性があるので、「これを言いたいと理解してますが、合ってますか?」と再度聞いてほしいです
・日本語力が高い方ほど「(わからないけど)今更わからないと言えない」というケースが多々あります。質問しやすい空気は作っていきたいです
日本の会議では沈黙が「普通」になっていて、分からなくても聞きづらい雰囲気があります。だからこそ「ここまでで質問ありますか?」と一言添えるだけで、安心して確認できる空気作りが大切なんです✨
①慣用句や専門用語は、簡単な言葉に
例:「至急対応してください」 → 「すぐにやってください」
②カタカナ語は和語にする
例:プレゼン→発表
③「ハサミの法則」を参考に~はっきり・さいごまで・短く
・やさしい日本語を使うこと。必ず口頭だけではなくテキストでも確認すること
・似てる意味をもつ、別の言葉で伝えた
「やさしい日本語」をどう実践すればいいのか…。
そんな疑問に答えてくれるのが、「やさしい日本語ツーリズム研究会」と明治大学国際日本学部の山脇啓造ゼミが制作した動画「やさしい せかい」です。
やさしい日本語ラップ「やさしい せかい」(Multilingual subtitles)
職場の研修やミーティングでも活用できる動画なので、ぜひチェックしてみてくださいね👀
最後に ― 違いを受け止めることが組織を強くする
寄せられた声から見えてきたのは、こうした悩みは誰か一人のスキル不足ではなく、日本語という言語や文化に根ざした共通の課題だということです。
だからこそ大切なのは、個人の工夫にとどめず、チームで共有し、少しずつ仕組みに変えていくこと。
違いを受け止め、すれ違いが生まれやすいポイントは工夫してカバーしていく。
その積み重ねが、社員の定着率や組織の風通しを良くしていきます。
心理的安全性が保たれ、誰もが安心して質問や確認ができる職場は、外国籍社員だけでなく、すべての人が力を発揮できる環境につながります。
それは、多文化共生やダイバーシティ経営を考えるうえで欠かせない第一歩。
寄せられた悩みの一つひとつが、組織を強くするヒントになっていくのです。
「こんなことを取り上げてほしい」という声があれば、ぜひコメントで教えてください✨
これからも「GTNお悩み相談室」をどうぞよろしくお願いします☺
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